年度またぎの経費精算では、精算の締め日と、会計上どの事業年度の費用になるかが別の基準で決まります。
締め日は社内の事務処理サイクルです。一方、法人税ではその事業年度終了の日までに債務が確定しているかで判断します。「15日締めだから3月16日以降は翌月分」という処理は、精算事務としては分かりやすいものの、税務上の年度帰属とは別の問題です。なお本ページでは、決算期をまたぐこと(年度またぎ)を通して「決算日をはさんで発生と精算が分かれる経費」を扱います。

3月決算・15日締めの会社で、
何が起きているか

精算のサイクルと事業年度の区切りがズレるため、決算月だけ処理が二重になります。

  • 3月16日から3月31日に発生した経費は、社内では4月15日締めで精算される
  • 精算書が回ってくるのは4月なので、3月分だという意識が薄れる
  • 承認が4月20日になり、記録上は翌期の日付だけが並ぶ
  • 従業員が提出を忘れ、3月28日の領収書が5月の精算に混ざる
  • 決算月の締め分だけを確認しても、遅れて出てくる分を拾いきれない
  • 結果として、経理担当者の記憶と注意力に依存した確認になる
決算月の精算書を1回確認すれば終わり、とは限りません。決算日以前の日付の領収書は、決算日より後の精算にいつでも混ざり得ます。厳密に行うなら、決算後しばらくの間に提出された経費精算書について、決算日以前の日付が含まれていないかを確認する必要があります。

判断の基準は「債務の確定」

法人税法22条3項2号を受けて、国税庁の法人税基本通達2-2-12が要件を示しています。

法人税基本通達2-2-12(債務の確定の判定)

償却費以外の費用で、当該事業年度終了の日までに債務が確定しているものとは、別に定めるものを除き、次に掲げる要件のすべてに該当するものとされています。

  1. 当該事業年度終了の日までに当該費用に係る債務が成立していること。
  2. 当該事業年度終了の日までに当該債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること。
  3. 当該事業年度終了の日までにその金額を合理的に算定することができるものであること。

出典:国税庁「法人税基本通達 第2章第2節第2款 販売費及び一般管理費等」2-2-12

ここで見ているのは決算日時点の状態です。精算書がいつ回ってきたか、いつ承認したか、いつ支払ったかではありません。決算日の時点で、会社に支払う義務が生じていたのか。その義務の原因となる事実が起きていたのか。金額が計算できる状態だったのか。この3つを順番に確認していきます。

ケース別の確認ポイント

結論を示すものではありません。それぞれの状況で、何を確認する必要があるかの整理です。

経費の発生日精算締め/承認確認すること
3月10日 3月15日締め
3月15日承認
決算日前に精算まで完結しています。通常のサイクル内で処理される部分です。
3月20日 4月15日締め
4月15日承認
精算は翌期ですが、決算日時点で債務の3要件を満たしていたかを確認します。満たしていれば前期の費用として検討する対象になります。
3月30日 4月15日締め
4月20日承認
承認が翌期であること自体で決まるものではありません。決算日時点で会社の負担が確定していたかを確認します。
3月28日 本人が提出を忘れ
5月15日締めに混入
提出が遅れただけなのか、決算日より後に会社の負担が確定したのかを区別します。決算月の締め分だけを見ていると漏れる部分です。
3月25日 社内規程で「会社が認めた
支出に限り負担」と定めている
承認が「会社が負担するかどうかを決める行為」なのか、「支払うための手続」なのかによって、確認すべき点が変わります(次章)。

承認日だけを見ればよいわけではない

社内規程の書き方ひとつで、確認すべき論点が変わる例です。

前提

3月25日、従業員が現場で使う工具と消耗品を自分で立て替えて購入しました。経費精算の締め日は15日のため、精算書が出てきたのは4月15日締め、社内の承認は4月20日です。会社は3月決算です。

規程が「会社が認めた支出に限り、会社が負担する」となっている場合

会社が負担するかどうかは、社内の承認によって決まります。実際、私物と業務用の区別がつきにくい物品や、事前の相談がなかった高額な購入について、会社が負担しないと判断することもあります。つまり3月31日の時点では、その支出を会社が引き受けるかどうか自体がまだ決まっていない状態です。この場合、債務の3要件のうち、そもそも1つ目の「債務が成立していること」を決算日時点で満たしていたかが論点になります。金額が分からないという話ではなく、支払う義務そのものが承認にかかっている点が重要です。

規程が「業務に必要な物品の購入費は会社が負担する。精算は毎月の締めと承認の手続を経て行う」となっている場合

承認は会社が負担するかどうかを決める行為ではなく、精算事務の手続と読める余地があります。そうであれば、購入して業務に使われた時点で債務が成立していると考えられる可能性があります。

同じ「4月20日承認」という事実であっても、規程の書き方によって確認すべき点が変わります。経費の発生日と承認日を並べるだけでは足りず、社内規程において承認が何を意味するのか——会社が負担するかどうかを決める行為なのか、支払うための手続なのか——まで見る必要があります。ここは会社ごとの規程と実態によるため、顧問税理士にご確認ください。

確認対象を抽出するところまでを、
アプリで行う

経費精算アプリ EXP-Docs には、決算日をまたぐ経費を抽出する機能があります。

紙やエクセルで運用していると、経理担当者が領収書を1枚ずつ見て、日付を確認し、決算日以前かどうかを判断していくことになります。決算月の精算書だけでなく、その後に提出された分も確認する必要があるため、確認作業そのものが負担になります。

EXP-Docsでは、決算日を設定しておくと、決算日以前の日付でありながら決算日より後に精算された経費を自動で抽出します。該当する明細の件数と合計金額を画面上に表示するため、経理担当者は抽出された明細だけを確認すればよくなります。

エクセルの入力感覚はそのままに、社員別・対象月別にWeb上で一元管理できるため、そもそも「誰の・いつの精算書か」を探す手間もなくなります。詳しくは経費精算アプリ EXP-Docsをご覧ください。

アプリが行わないこと
EXP-Docsが行うのは、確認すべき明細の抽出までです。金額の大小によって扱いを変える判定や、前期に計上すべきかどうかの判断は行いません。これらは会社ごとの継続的な処理方法や個別の事情に関わる領域であり、税務判断にあたるためです。抽出された明細をどう処理するかは、顧問税理士にご確認ください。

ナビドックスが行う範囲

役割担当
決算日をまたぐ経費の抽出EXP-Docs(アプリ)
抽出された明細の整理・資料化ナビドックス(経理代行)
前期に計上するかどうかの判断顧問税理士
決算・申告顧問税理士

税理士に相談するときに、揃えておくとよいもの

決算をまたぐ経費の扱いは、社内規程と事実関係が揃って初めて検討できます。「3月30日の経費です」とだけ伝えても、その承認が会社の負担を決める行為なのか、支払うための手続なのかが分からなければ、判断のしようがありません。次の4点を用意しておくと、相談が進みやすくなります。

  • 社内規程の該当条文(経費の負担と、承認について定めた部分)
  • 決算日と、経費精算の締め日・承認のタイミング
  • 対象となる明細の一覧(発生日・内容・金額・承認状況)
  • そのうち決算日以前の日付になっているものの件数と合計金額

このうち明細の抽出はEXP-Docsで行えます。資料としての整理は、経理代行としてお手伝いできます。

税務上の判断について
決算をまたぐ経費の取り扱いは、会社の継続処理や取引の内容、社内規程の定め方によって変わります。本ページの記載は考え方の整理であり、個別の判断については顧問税理士にご確認ください。ナビドックスは経理代行であり、税務判断は行いません。
顧問税理士がいない場合は、提携先の税理士をご紹介できます。お問い合わせの際に、その旨をお知らせください。

よくある質問

年度またぎの経費精算はできますか?

経費精算そのものは可能です。ただし、精算できるかどうかと、どの事業年度の費用になるかは別の問題です。提出期限を過ぎた場合の扱いを社内規程で定めている会社もあるため、まず自社の規程をご確認ください。そのうえで会計上は、決算日時点で債務が確定していたかによって、どちらの事業年度の費用として検討するかが変わります。

経費精算の締め日を過ぎてから提出された領収書は、翌期の費用になりますか?

提出が遅れたという理由だけで翌期の費用になるわけではありません。法人税では、その事業年度終了の日までに債務が確定しているかどうかで判断します。精算の締め日は社内の事務処理サイクルであり、会計上どの事業年度の費用になるかとは別の基準です。個別の判断については顧問税理士にご確認ください。

「15日締めだから3月16日以降は翌月分」という処理ではいけないのですか?

精算事務としては分かりやすい運用ですが、税務上の年度帰属とは別の問題です。3月決算の会社で3月16日から3月31日までに発生した経費は、社内では4月15日締めで精算されますが、決算日時点で債務が確定していれば前期の費用として検討する対象になります。

債務が確定しているかは、何で判断しますか?

法人税基本通達2-2-12では、事業年度終了の日までに、その費用に係る債務が成立していること、その債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること、その金額を合理的に算定することができること、の3つの要件をすべて満たすものを債務が確定しているものとしています。

承認が翌期になった経費は、翌期の費用になりますか?

承認日だけで決まるものではありません。社内の承認が翌期であっても、決算日時点で会社の負担が確定していたのであれば前期の費用として検討する対象になります。一方で、承認によって初めて会社が負担するかどうかが決まる制度であれば、判断が変わる余地があります。社内規程がどのような定めになっているかを確認する必要があります。

年度をまたいだ領収書が、決算後に出てきた場合はどうしますか?

提出が遅れただけなのか、決算日より後に会社の負担が確定したのかを区別して確認します。決算月の締め分だけを見れば足りるとは限らず、従業員が提出を忘れていた領収書が数か月後の精算に混ざることもあるため、決算日以前の日付が含まれていないかを一定期間確認する運用が必要になります。

少額の経費も、すべて前期に計上し直す必要がありますか?

金額の大小による取り扱いは、会社ごとの継続的な処理方法や個別の事情に関わるため、一律の基準をお示しすることはできません。顧問税理士にご確認ください。ナビドックスは経理代行であり、税務判断は行いません。

税理士に相談するときは、何を用意すればよいですか?

社内規程のうち経費の負担と承認について定めた条文、決算日と経費精算の締め日・承認のタイミング、対象となる明細の一覧(発生日・内容・金額・承認状況)、そのうち決算日以前の日付になっているものの件数と合計金額の4点です。決算をまたぐ経費の扱いは、社内規程と事実関係が揃って初めて検討できるため、これらを整理してから相談すると話が進みやすくなります。

顧問税理士がいない場合はどうすればよいですか?

ナビドックスから提携先の税理士をご紹介できます。お問い合わせの際に、顧問税理士がいない旨をお知らせください。

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